若手音楽家による弦楽四重奏の魅力
Tone Color Collective × 100万人のクラシックライブ
2024年6月21日(金)
としま区民センター小ホール
01
ハイドン:
弦楽四重奏曲第76番ニ短調Op.76-2「五度」
第1楽章 Allegro
第2楽章 Andante o più tosto allegretto
第3楽章 Menuetto
第4楽章 Finale: Vivace assai
弦楽四重奏曲作品76-2は、バイドンがヨーゼフ・エルデーディ伯爵という人物のために書き下ろした「エルデーディ四重奏曲」という、6つの弦楽四重奏曲から成る曲集の2番目の曲として収められています。ハイドンの第76番目の四重奏曲としても知られていましたが、近年の研究により偽作などを除くと第61番と考えられています。
この曲集は、ハイドンが64歳の晩年に作曲されており、既にハイドンに対する世間の評価は揺るぎないものでした。モーツァルトが1782年-1785年の間に作曲し、ハイドンに捧げた「ハイドンセット」として知られる弦楽四重奏曲集の発表から既に10年以上が経過しており、ハイドン自身もロンドン交響曲などの重要な作品群を世に送り出し大成功をおさめた後、ウィーンに帰還した時期に書かれています。ウィーン帰還後は、もともと仕えていたエステルハージ家の当主が変わったことから、宗教的な作品の依頼も多く受けて作曲している時期でもありました。
エルデーディ四重奏曲の中には、「皇帝」や「日の出」の愛称が付けられている曲が多く、この第2番は「5度」という呼び名で知られています。
「五度」の愛称の由来ともなった五度の主題 "A - D - E - A"は、シリアスな雰囲気で冒頭に示され、その後モチーフとして作品の様々な場面に形を変えて現れることで、作品全体の統一感に繋げられています。
02
メンデルスゾーン:
弦楽四重奏曲 第2番 イ短調 Op. 13 より第4楽章
第4楽章 Presto - Adagio non lento
この曲は、1827年に18歳のメンデルスゾーンが書いた最初の弦楽四重奏曲(作品番号は第1番と逆転している)で、当時亡くなってまだ間もなかったベートーヴェンの後期の弦楽四重奏曲から大きく影響を受けた作品です。
また、第一楽章と終楽章が、一貫して性格的に暗い短調で書き始められている点では、前述のハイドンの5度と一致しており、これは当時の慣習からすると、かなり珍しい試みと言えます。
特に、第一楽章の第1主題や、第二楽章のフガートなどに、色濃くベートーヴェンの後期作品の影響を感じ取ることができます。今回取り上げる第四楽章は、ヴァイオリンによる劇的な幕開けで始まります。ベートーヴェンの第15番カルテットとも曲想が重なる部分が多くありますが、その後の熱気を帯びながら情緒豊かに展開していく様は、神童メンデルスゾーンに、ロマン派音楽の夜明けを告げられているかのようです。
03
ドヴォルザーク:
第1楽章 Allegro ma non troppo
第2楽章 Lento
第3楽章 Molto vivace
第4楽章 Finale: Vivace ma non troppo
ドヴォルザークは1892年からの3年間、破格の待遇を受けてニューヨークに設立されたナショナル音楽院の院長としてアメリカに赴任しました。(現在の貨幣価値に換算すると年間$400,000の高待遇だったと言われます)
ドヴォルザークの音楽は、しばしば、チェコやスラブ地方の民謡や、渡米時に触れた黒人霊歌や先住民の音楽などを取り入れた音楽の先駆けと思われがちですが、その殆どは、ドヴォルザークの「〜風」を装った創作であり、彼自身は若かりし頃にブラームスの作品に憧れ、ドイツ音楽の古典的な形式美を手放すことはありませんでした。その中に、オリジナルな民族音楽的要素を取り入れることで成功を収めたことで、後世の国民楽派の作曲家たちに大きな影響を与えたことには間違えないでしょう。
しかしながら、ドイツの出版社Simrockがドヴォルザークの才能に目をつけ、出版時にAntoninではなく、ドイツ風のAnton. Dvorak と表記したことには激怒したそうです。
第1楽章は、ファ、ソ、ラ、ド、レという5音の民謡風な音階でヴィオラがインパクトのある第一主題を奏でます。第二主題は農村を思わせるようなのどかな旋律で、この二つの主題が対となることで、古典的なソナタ形式ながら、それまでの作曲にはなかった親しみやすさを醸し出します。
第2楽章は、出だしの黒人霊歌風の哀愁を帯びた旋律をヴァイオリンとチェロで交互に繰り返し唱和する中で、その合間を2ndヴァイオリンとヴィオラが絶え間なく縫うような音形で曲を運び続けます。
第3楽章は、スヴィルヴィルという地方で耳にした鳥のさえずりをもとにしたモティフで描かれ、各パート間の込み入ったリズムのやり取りが楽しいスケルツォです。
第4楽章は、やはり古典的なロンド形式で書かれています。アメリカ先住民のドラムを彷彿とさせる、打楽器的で規則的なリズミカルな伴奏と、その中で華麗に踊っているような1stヴァイオリンの楽しげな旋律は、1楽章の5音階の主題を逆行させた音の配列になっています。
弦楽四重奏曲 第12番 ヘ長調 Op. 96「アメリカ」
出演者プロフィール
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